奈良市の薬師寺が所蔵する木彫の仏像で、平安時代後期の作。「四天王」とは、もともと古代インドの神々で仏教に帰依したとされる天部に属し、四方を守護するとされた持国天(東)、増長天(南)、広目天(西)、多聞天(北)の4神を指す。薬師寺のものは、おのおの高さ1.1メートルほどの寄木造で、長く多聞天、持国天の二天だけが伝わり、1902(明治35)年に「二天王像」として国の重要文化財に指定された。2年後の04年に破損部分の修理を受け、その後、東京国立博物館で公開されてきたが、10年ほど前に薬師寺に返還。これを機に専門家が詳しく調査したところ、寺が保管する仏像片にこの2体の破片が含まれるとともに、もう1体、首と両腕の欠けた像が復元できることが判明。しかもこちらが本来の持国天であり、これまで持国天とされてきたのは広目天だったことや、その右腕は4体目の増長天のものだったことも明らかになった。そこで、奈良国立博物館の文化財保存修理所に、多聞天・広目天の補修、並びに持国天・増長天の復元を依頼。2011年6月にようやく完成した。修復後初公開されたのが、11年7月29日に岐阜市歴史博物館で開幕した「国宝 薬師寺展」。国宝の「吉祥天女画像(きっしょうてんにょがぞう)」や「聖観世音菩薩像(しょうかんぜおんぼさつぞう)」「八幡三神像(はちまんさんしんぞう)」などとともに、多くの見学者をひきつけている。同展は10月2日まで開催。終了後は1981(昭和56)年に再建された薬師寺西塔に安置される予定。