東京・浅草の三社祭の起源である「舟祭(ふなまつり)」を再現した伝統行事で、舟に載った浅草神社(台東区)の神輿(みこし)が隅田川を行き来するというもの。三社祭は、浅草神社(三社様)の例大祭で、毎年5月に一之宮、二之宮、三之宮の三つの神輿を担いで氏子の各町内を練り歩く。鎌倉時代の1312年に神輿を舟に載せて祝った「舟祭」がその始まりとされ、「舟祭」は江戸末期までは続いたが、明治以降は、戦災で焼失した浅草寺(せんそうじ)の再建記念の1958年に行われて以来、54年ぶり2回目となる。ちなみに浅草寺は、飛鳥時代の628年に、桧前浜成(ひのくまのはまなり)・竹成(たけなり)という漁師の兄弟が、隅田川で網にかかった観音像を引き揚げ、郷土の文化人であった土師真中知(はじのまつち)が堂をつくって祀(まつ)ったのが起源で、これら3人を神様(三社権現)としたのが浅草神社。2012年は三社祭が700年の節目を迎えることから、それを記念して舟渡御が行われることになった。同年3月17日夜、神輿三基を浅草寺本堂に一夜安置する「堂上げ」、翌18日に本堂から降りる「堂下げ」という神事が氏子によって執り行われ、「金龍の舞」「神事びんざさら」などの奉納舞とともに浅草町内を渡御したのち、大勢の見物客が見守るなか三基の宮神輿は東参道桟橋から台船に載り、隅田川を上流の桜橋に向かい、そこから川下の浅草橋まで航行して引き返し、駒形橋で上陸、浅草神社に帰った。江戸時代には「観音祭」「浅草祭」とも呼ばれたこともあり、神事と仏事が同時に行われるという全国的にも珍しい行事である。