ジェンダー(男女の性差)についての理解を広めたり、研究することに貢献したSFやファンタジーに与えられるアメリカの文学賞で、正式にはジェームズ・ティプトリーJr文学賞。ジェームズ・ティプトリーJr(ジュニア)は1987年に没したアメリカの女性SF作家で、本名はアリス・B・シェルドン。「たったひとつの冴えたやりかた」などの作品で知られている。68年のデビューから覆面作家として男性名義のペンネームを使用し、骨太な作風で知られていたが、76年に女性であることが判明して、当時のSF界に大きな衝撃をもたらした。彼女の名を冠した同賞は、ティプトリー同様に女性のSF作家であるパット・マーフィ(Pat Murphy)、カレン・ジョイ・ファウラー(Karen Joy Fowler)らが、91年に設立した。2010年3月、よしながふみの人気漫画「大奥」(英語訳の1、2巻)が09年度の同賞を受賞した。日本人の受賞は初めてで、漫画が同賞を受賞するのも初めて。同作品は謎の疫病によって男の人口が激減し、男女の役割が逆転した江戸時代の大奥を舞台とした物語で、09年に第13回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞しており、10年10月には「嵐」の二宮和也、柴咲コウの主演で実写映画化される予定。