古代ローマ時代に、現世の恨みを死者の魂に託して神々に伝えたとされる鉛製の小板。特定の人物の不幸を願い、神によって罰せられるよう、呪いの言葉を鉛板に刻む風習は、紀元前6世紀から紀元後8世紀ごろまで、古代ギリシャやローマの各地でみられた。京都大学が主催するレバノン発掘調査団は、2010年3月、中東のレバノン南部にある古代都市遺跡フェニキアの中心地テュロスにある地下墓から、2~4世紀のものとみられる鉛板を発掘。レバノン考古総局から借用し、日本で解読にあたっていたが、10年12月7日、解読の結果について一部を報道機関に発表した。今回解読された鉛板は、幅6センチ、長さ14.7センチ。板面には1000文字を超えるギリシャ文字が、55行にわたってびっしりと刻まれていた。文章は呪文のような言葉から始まり、「あなた方のお力で、バッソス、バラテー、ハドリアノス、ダダの愚かな考えを制御してください」と4人の名を挙げ、「彼らの体を衰弱させ」「彼らに、私が望む通りに、猿ぐつわと恥の印と不名誉を与えてください」などとつづられていた。同様の鉛板はこれまでに1600枚ほど見つかっているが、今回のように文字を解読できる状態のものは大変貴重だという。同年12月8日から12日まで、京都大学総合博物館(京都市左京区)で一般公開された。