1884(明治17)年に編纂(へんさん)された「小学唱歌集 第三編」にある歌の一つ。歌詞内容から、「蛍の光」と並んで主に卒業式で歌われてきた。作詞・作曲については長らく不詳とされてきたが、英語学、英米民謡などを専門とする一橋大学名誉教授の桜井雅人が、2011年1月24日までに原曲と見られる歌の楽譜をネット上で発見した。それは、1871年にアメリカで出版された「THE SONG ECHO」という本に収録された「SONG FOR THE CLOSE OF SCHOOL」(卒業の歌)という4部合唱の曲で、メロディーから記号の位置まで「あおげば尊し」と一致していた。作詞はT.H.ブロスナン、作曲はH.N.Dとなっているがいずれも不詳。しかし、この本はほとんどがオリジナル作品を採用しているところから、原曲と見て間違いないという。唱歌は、1879(明治12)年、文部省に設置された「音楽取調掛(おんがくとりしらべががり)」の初代所長伊沢修二(1851~1917)が、初等教育において西洋音楽を学ばせるために編纂したもの。メロディーは当時アメリカで広まっていたスコットランド、アイルランド、ドイツなどの民謡や賛美歌などから日本人に親しみやすいものを選び、これに日本語の歌詞をつけたものが多く、「蛍の光」はスコットランド民謡、「庭の千草」はアイルランド民謡。中にはモーツァルトやウェルナー、ジャン=ジャック・ルソーの曲もある。