人が手を入れることで物質の循環機能が保たれ、環境共生空間として、生産性や生物多様性が高まった沿岸海域。薪(まき)や炭などの生産のため、山間部の林地に成立した里山になぞらえて、1998年に九州大学応用力学研究所の柳哲雄教授が定義づけを行った。環境省は、2007年に策定した21世紀環境立国戦略の中で、水質汚濁が進みやすい閉鎖性海域の里海創生支援を打ち出し、08年より正式に事業として展開。地方公共団体にモデルとなる支援海域を公募し、石川県の七尾(ななお)湾、兵庫県の赤穂海岸、長崎県の大村湾、大分県の中津干潟の4海域を選定した。今後3年間かけて、地元主体で進める里海づくりの事業を支援し、参考となるマニュアル策定の基礎をなす各種データを収集採取。いずれは他の海域にも活用して、水質および底質(堆積物を含む海底の環境)の改善、生態系や自然環境の復旧、漁獲生産量の増加などを目指す。また10年度には里海30選の選定も予定されている。