ロシアのシベリア地方南部に、約4万年前、現生人類やネアンデルタール人と共存していた可能性の高い、未知の人類。2008年アルタイ山脈のデニソワ洞穴で発見された子どもの小指の骨を、ネアンデルタール人のゲノム解析で知られるドイツのマックスプランク進化人類学研究所などの国際研究チームがDNA分析した結果、ネアンデルタール人、現生人類とは約400カ所の遺伝子的な違いがあり、別の系統に属する人類であるということが判明したと、10年3月24日付のイギリスの科学誌「ネイチャー」電子版で発表された。この小指の主は「X-woman」と名付けられ、5~7歳の子どもと推測されているが、実際は性別も不明。保存状態が悪いため、骨格構造や筋肉組織、知能、外見などはわかっていない。この骨が発見された地層は、放射性炭素年代測定法によると約3万年前から4万8000年前の間のものであった。今回の調査では細胞小器官ミトコンドリアから抽出したDNAを解読したが、ミトコンドリアDNAは母親から受け継がれる遺伝子で、核DNAに比較して遺伝情報が少ない。分析の結果、約100万年前に、現生人類やネアンデルタール人と共通の祖先から枝分かれしたとみられる。最初の人類は約200万年前にアフリカを出立したとされ、デニソワ人が新種の人類と特定されれば、それ以後、約50万年前まで途絶えている人類のアフリカ出立の空白期間を埋める可能性もあるという。