死海に近いイスラエルの要塞都市クムランの洞窟群から発見された羊皮紙やパピルス、銅板など、約3万点の断片から成る古文書群。紀元前3世紀から西暦1世紀にかけて書かれたもので、「エステル記」を除く旧約聖書のほぼ全文に加え、今日では聖書正典に含めない外典や偽典、及び文書の所有者とみられる宗教集団の儀礼や規則などが記されている。オリエント世界で広く使われたアラム語や、ギリシャ語なども一部交じるが、ほとんどは古代ユダヤ人の用いたヘブライ語で書かれ、現存する旧約聖書写本としては最古。また、キリスト教成立前後を知る手がかりとしても高い価値を持つ。1947年、ベドウィン族の羊飼いが偶然発見。以後56年までに11の洞窟から約850種類の写本が見つかっている。最も保存状態がよいとされる8巻分を所蔵するエルサレムのイスラエル博物館では、2010年10月にデジタル化プロジェクトを発表。グーグルの技術協力を得て、翌11年9月26日、「イザヤ全書」「教団規定」「ハバクク書注解」「神殿の巻物」「戦いの書」の5巻をネット公開した。一般的なカメラの約200倍以上という1200メガピクセルの高解像度で撮影された画像は、羊皮紙の質感も感じられるほどで、巻物を広げるように閲覧できる。さらにヘブライ語のテキストをクリックすると英訳が現れ、グーグルでキーワード検索を行うこともできる。グーグルでは、これまでにも同じイスラエルの「ヤド・ヴァシェム・ホロコースト写真コレクション」や、スペインのプラド美術館などの歴史・文化遺産を、細密画像でデジタル化するプロジェクトを展開してきた。