アントニオ・ストラディバリと並び史上最高のバイオリン職人とされるバルトロメオ・ジュゼッペ・ガルネリ(1698?~1744?)が1741年に製作した逸品。かつての所有者だったポーランドのバイオリニスト、パウル・コハンスキの名を冠して「コハンスキ」と呼ばれる。2009年10月22日、アメリカを代表するバイオリニスト、アーロン・ロザンドが50年以上愛用してきた「コハンスキ」を約1000万ドル(約9億円)でロシアの富豪に売却したと、ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。バイオリンの売買価格としては過去最高に匹敵する。ガルネリのバイオリンは、ストラディバリが繊細華麗な音色でその造形までが完璧なのに比して、音色は豪放、造形も荒々しいのが特徴。作品のラベルに十字架とギリシャ語でイエス・キリストを意味する頭文字「IHS」を記したことから「ガルネリ・デル・ジェス(イエスのガルネリ)」と通称される。現存するガルネリ・デル・ジェスは、わずかに100とも200とも言われ、希少性の高さから高額で売買される。それらは「コハンスキ」をはじめ、パガニーニ所有の「カノン」、日本音楽財団所有の「ムンツ」のように、固有名詞が付くことが多い。ロザンドは、他の演奏家が弾くことに同意しているという。