東京都台東区上野にある、江戸時代に開場した日本で唯一の講談専門の定席(座席数約30)。2011年9月24日、約150年の歴史に幕を下ろし閉場した。1857年(安政4)、上野広小路に講談専門の講釈場「軍談席本牧亭」として開場。1876年(明治9)に鈴本亭(のちの鈴本演芸場)と名を変えたが、1948年(昭和23)に新たに本牧亭として再建、復活。昭和30年代までは人気を誇り、講談の発展と普及に大いに貢献したが、以後、講談愛好者の減少するなか、上野、池之端、湯島など移転と閉場を繰り返しながら、2002年(平成14)から現在の場所に。邑井貞吉(むらいていきち)、5代目宝井馬琴など多くの名人が活躍した。定期的な興行と日本料理店を兼ねる形で存続を図ってきたが、経営難と後継者がいないことなどから閉場となった。講談とは日本の伝統話芸の一つで、お家騒動や敵討ち、軍記など歴史上の出来事を題材に、講談師が張扇(はりせん/はりおうぎ)や拍子木(つけ)で釈台をたたきながら調子をつけて語る寄席芸。講釈ともいう。最後となった24日は、本牧亭で初めて高座を踏んだ、人間国宝の一龍斎貞水が「赤穂義士本伝」を口演した。