展覧会のため日本の美術館・博物館が外国から借り受けた美術品が、輸送時や展示中に盗難、破損、テロなどの被害に遭ったとき、損害の一部を国が負担する制度。日本における美術展は国民の関心や人気も高いが、必ずしも国内コレクションが十分でないことから、国民のニーズに応えるために企画展が大きな役割を果たしている。展覧会で外国から美術品を借り受ける場合には、万一に備えて損害保険をかけることが通常である。しかし近年、国際的テロや大規模災害等の相次ぐ発生や美術品の価格上昇で保険料額が高騰。海外の秀作をそろえた質の高い大規模展覧会の開催が困難になってきていた。また国によっては貴重な美術品を貸し出す場合、借り入れ国側に国家補償制度があることを条件とすることもある。既に欧米主要国では、主催者の負担軽減や、国民が優れた文化芸術を鑑賞する機会の増大等を目的にこの制度を設けている。そこで、2004年から文化庁は保証制度導入の検討を始め、数々の論議を経て、10年10月29日「展覧会における美術品損害の補償に関する法律案」が国会に提出され、11年3月29日、美術品国家補償法が衆議院本会議で可決、成立した。遅くとも同年6月までには施行される予定。