戦隊ヒーローもののフォーマットを借りて、原子力推進勢力の欺瞞(ぎまん)や独善ぶりを揶揄(やゆ)した映像作品。もとは、2012年1月14日に尾米タケル之一座(おこめたけるのいちざ)が開催したコントライブ「反原発コントフェス」で上映された作品だが、公演後、動画投稿サイトのYouTubeにアップされ、笑える映像作品として話題を呼んでいる。特撮ヒーロー番組の主題歌に特有の曲調で作られたテーマ曲をバックに、キメポーズ、格闘シーン、敵や謎の人物の登場、合体シーンなど、オープニングタイトルのパターンをまるごとパロディー化している。しかし、そこで繰り広げられる戦隊の活動は「人類の未来を守る」のでもなければ「世界の平和を守る」のでもなく、「原発利権を守る」ことにのみ執着したものに描かれる。作中クレジットでは、原作は正力松太郎、戦隊メンバーは、東電レッド/勝又恒久、経産省ブルー/寺坂信昭、マスコミホワイト/日枝久と紹介される。それぞれの名前は、日本への原発導入を推し進めた実業家・政治家、東京電力の会長(「勝又」と表記)、第5代原子力安全・保安院院長、福島原発事故後も原子力への理解を呼びかけたフジ・メディア・ホールディングス代表取締役会長と同名にするなど、風刺は細にわたる。一方、スイシンジャーの敵となる怪人反原発男を歌った「怪人の唄」も同イベントで上映されており、やはり動画投稿されている。こちらは、原発肯定の意識に誘導された社会の中で、反原発を掲げる個人が孤立させられ、怪人視されてしまった悲哀を、1970年代半ばから活動したシンガーソングライターの森田童子調で歌ったものになる。