JR東日本の東京駅丸の内側に建つ駅舎。約5年4カ月に及ぶ保存復原工事を終え、2012年10月1日、全面開業した。日本近代建築の祖辰野金吾の設計により東京の中央駅として1914年(大正3)年に創建。赤レンガに白いラインをあしらい、南北2つのドームを備えた3階建ての風格ある建物は、当時まだ野原だった丸の内では圧倒的な存在感を示した。関東大震災にも耐えた堅固な造りだったが、第二次世界大戦末期の45年5月の空襲で南北のドームと屋根、内装などを焼失。47年に修復されたが、一部を除き2階建てとなり、ドームは寄棟式の八角屋根となった。その後本格修理は行われないまま50年以上が経過。その間何度か再開発や高層化計画が持ち上がったが、駅舎の保存復元を願う住民運動などもあり、99年に復原が決定した。2003年国の重要文化財に指定され、JR東日本も本格的な復原計画に着手。東京駅上空の「空中権」を売却することで500億円の費用を捻出し、07年5月30日、ようやく着工に至った。復原の目玉は南北のドームと3階の再建。一から作り直す「復元」でなく、原形に戻す「復原」を目指して、現存する創建当時の部材はできる限り保存・活用し、大正時代の威容を忠実に再現。ドーム内部も当時の写真や文献に基づき、機関車の車輪を模した見上げ部分をはじめ、随所に配されたレリーフや彫刻などもよみがえった。一方で、現代の基準に合わせた免震構造を採用。地下に設置した約350台のアイソレータと約160台のダンパーで、地震の揺れを軽減吸収する。12年10月3日には06年から休業していた東京ステーションホテルもリニューアルオープン。1泊約80万円のロイヤルスイートルームなどが話題となっている。