江戸時代中期の京都の絵師、伊藤若冲(1716~1800)の屏風絵。六曲一双(各159cm×354cm)の水墨画で、右隻(せき)には鼻を振り上げ岸辺にうずくまる白象、左隻には潮を噴きながら潜ろうとする鯨を描いている。2008年夏に北陸の旧家で発見され、滋賀県甲賀市の美術館MIHO MUSEUMの辻惟雄(のぶお)館長が鑑定してきたが、12月20日までに真筆と判定された。辻館長は、若冲晩年の号が入った「米斗翁八十二歳画」の落款や「若冲居士」の印、並びに波頭の独特の表現や象を描いた他の作品との酷似などを判断の根拠に挙げている。若冲は、京都の錦小路にある青物問屋に生まれ、一度は家業を継ぐが40歳で家督を弟に譲り、以後画業に打ち込んだ。20代の終わりごろ狩野派に学んだとされるが、むせ返るように濃密で幻想的な細密描写や大胆な構図で独自の境地を築き、「動植綵絵(どうしょくさいえ)」三十幅をはじめ、「釈迦・普賢・文殊像」「仙人掌群鶏図(さぼてんぐんけいず)」などの傑作を残した。今回発見された屏風は、保存状態は比較的良好だが、一部修復が必要で、公開は早くても09年秋以降になるものと見られる。