3世紀、メソポタミアのバビロンに生まれたイラン人マニ(216~276または277年)によって開かれた宗教。万物を光(=善、精神世界)と闇(=悪、物質世界)の対立と見る二元論が特徴で、叡知(グノーシス)による人類の救済を説き、物質世界を否定して極端な禁欲を課す。一時は西はスペイン、北アフリカから東は中国にまで広まったが、イスラム教の浸透などにより滅びた。ヨーロッパでは、カタリ派などのキリスト教異端派に強い影響を与え、中国では明の時代まで、道教や仏教に偽装して密かに信仰された。また、イスラム教の断食などもマニ教の影響とされる。このマニ教の教えを示す宇宙観を描いたと見られる「宇宙図」が国内にあることを、京都大学の吉田豊教授らが2010年9月26日までに確認。国際マニ教学会で発表した。図は縦137.1センチ、幅56.6センチで絹布に彩色。中国の元時代(1271~1368年)またはその前後に、江南地方の絵師が描いたものと推定される。個人蔵だが日本へ渡った経緯は不明。図には10層に分かれた円弧状の「天」と8層に分かれた大地が見える。これは、マニ教の唱える宇宙観と合致するうえ、マニ教僧侶に特有の赤い縁取りがついた白いショールをまとった人物なども描かれていることから、マニ教絵画と断定された。マニ教では、布教のため教典とともに絵図を用いていたとされるが、いずれも散逸。中国の新疆ウイグル自治区などで絵画の断片が見つかっているほか、近年奈良市大和文華館所蔵の「六道図」が、マニ教の説教や裁きを描いたものと判明している。