聖武天皇愛用品として正倉院北倉に納められている唐からの伝来品で、正倉院宝物を象徴する国宝。2010年7月22日、奈良国立博物館は、同年10月23日~11月11日に開催される「第62回正倉院展」に、19年ぶりでこの琵琶を出展することを発表した。全長108.1cm、最大幅30.9cmの紫檀(したん)製で、表面にはラクダに乗って四弦琵琶を奏する西域系の楽人と椰子(やし)の木、裏面には一面に絢爛豪華な唐花文が、いずれも螺鈿(らでん)で描かれている。現在も演奏される四弦琵琶の起源がペルシャあたりとされるのに対し、五弦の琵琶はインドが起源とされ、これが現存する唯一の品。かつてのシルクロード交易を実感させる世界的逸品といえる。同展では、ほかにも法要の際に演じられる舞踊「伎楽」で酒に酔った西域王の役を表す面「伎楽面酔胡王(ぎがくめんすいこおう)」、蛇紋岩を蓋(ふた)付きのスッポン形容器に加工した「青斑石鼈合子(せいはんせきのべつごうす)」などの工芸品や、光明皇后が東大寺大仏に献納した「種々薬帳(しゅじゅやくちょう)」、下級役人が提出した盗難届などを集めた「正倉院古文書正集」など、当時の人々の暮らしがうかがえる貴重な史料を含む計71件(うち初出展14点)が展示される。