「北海98号」は、カロテノイド系色素を含むためにオレンジ色がかった果肉をした、ナッツ風味をもつばれいしょ「インカのめざめ」から変異発生した新種。北海道農業研究センターのばれいしょ育種圃場内にあるインカのめざめの増殖圃場で発見されたもので、その食味の特徴や生育特性、収量性を引き継ぎつつ、皮の色がサツマイモさながらの赤色をしているという新たな特徴をもっている。雪印種苗ではその種イモを「インカルージュ」という商標で2011年より販売する予定。従来とは異なる皮色や果肉色をもつジャガイモは、農業関連の各方面から少量ながら市場に出回っており、見た目のインパクトや楽しさを「売り」として、カラフルポテトとよばれている。カラフルポテトの研究起源は古く、同センターでは、ばれいしょの遺伝に関する調査を行う中で、南米アンデス地方が原産となる、赤紫系のアントシアニン色素を含む近縁の栽培種・野生種に近い品種を発見。当時の研究者の「人々を驚かせたい」という意向とともに1982年に研究を開始した。南米原産の品種を北海道で栽培するにあたり、交配と選抜をはじめとする試行錯誤を重ねながら、2000年に育成に成功。食味はもちろん、収穫量や病気への耐性などを考慮しながら、そのバリエーションを広げている。また一方で、カラフルポテトはその色素に特有の効果から健康への機能性が期待されており、同センター開発による紫皮紫肉の「シャドークイーン」や赤皮赤肉の「ノーザンルビー」では、胃がん予防の効果があることが確認されている。