国連教育科学文化機関(UNESCO ユネスコ)が登録する世界遺産のうち、自然災害や武力紛争、また都市開発などによって重大かつ明確な危険にさらされ、緊急の保護が必要なもののこと。「危機にさらされている世界遺産」の通称。危機遺産は世界遺産条約での基準に基づいて世界遺産委員会によって決定され、1975年よりユネスコが作成する「危機にさらされている世界遺産リスト」に登録される。2012年7月時点で38の遺産が登録されている。リストに登録されると、世界遺産基金からの緊急援助を受けられるほか、国際的な協力を仰ぐことが可能。危機を脱したと判断された場合にはリストから削除される。ユネスコは12年6月にアフリカ大陸マリの世界遺産、トンブクトゥなど5つの世界遺産を新たに危機遺産とした。トンブクトゥは古くから交易で栄え、14世紀に全盛期を迎えた砂漠都市。モスクや聖廟、イスラム指導者の聖墓を有し、1998年に世界遺産に登録されているが、2012年3月にマリ北部で起きたクーデター以来、イスラム過激派組織が同地を占拠。同年5月より過激派組織による聖廟などの破壊活動が行われており、懸念されている。