役者の表情を大胆にとらえる「大首絵」で知られる江戸時代の絵師、東洲斎写楽が描いた扇面画「四代目松本幸四郎の加古川本蔵と松本米三郎の小浪」のこと。ギリシャの国立コルフ・アジア美術館の所蔵品で、2008年7月に学習院大学の小林忠教授ら国際学術調査団が鑑定した結果、真筆と判定された。同年12月25日、東京の江戸東京博物館で09年7月4日から9月6日まで開かれる「写楽 幻の肉筆画」展で、日本に里帰りすることが決定した。写楽は寛政6(1794)年5月からわずか10カ月ほどの間に、およそ140点余りの作品を残したが、いずれも版画で、肉筆についてはいくつか候補はあるものの、まだ真贋に議論があり、真筆とされたものが一般公開されるのはこれが初めて。また、「仮名手本忠臣蔵」二段目を描いたこの絵は、役者と演目から寛政7(1795)年5月ごろの作と推測されるが、これは写楽が浮世絵版画の活動をやめた直後にあたり、「謎の絵師」写楽の正体に迫る意味でも、美術史上まれに見る大発見といえる。