定められた年限(式年)によって神殿をつくり神体を遷す(遷宮)こと。周期的な神霊の再生と、日本の国そのものの生命のよみがえりを期する意味があると言われている。用語としては中世以降にみられるが、もっとも有名な伊勢神宮(三重県伊勢市)で行われる神宮式年遷宮は、持統天皇の690年の第1回から、戦国時代(16世紀ころ)に一時中絶するが、現在まで1300年にわたって20年ごとに行われており、「延喜式」に規定がある。神宮式年遷宮は、神社の諸殿社の中で中心の社殿である正殿(しょうでん)をはじめ、御垣内(みかきうち)の建物すべてを建て替えし、さらに殿内の、神の衣服や正殿の装飾や器物である御装束神宝(おんしょうぞくしんぽう)を新調して、神体を新宮へ遷す神宮最大の重儀である。祭器具を新しくし、その年の新穀を天照大神に捧げ豊穣を感謝するとともに、更なる神徳をいただく1年で最も大きな祭りである神嘗祭を、完全な形で執り行うところの趣旨から、大神嘗祭(おおかんなめさい)とも言われている。2013年に第62回神宮式年遷宮が行われるが、05年からそれにかかわる諸祭・行事が進行中で、主なものとしては、05年の船形の「御船代(みふなしろ)」の用材を伐採するときの御船代祭、06年の造営の開始に際して作業の安全を祈る木造始祭(こづくりはじめさい)、08年の建設用地で安全を祈る鎮地祭、12年の正殿の柱を最初に立てる立柱祭、正殿の棟木を上げる上棟祭、新殿の萱(かや)を葺(ふ)き始める檐付祭(のきつけさい)、屋根を葺き終える甍祭(いらかさい)などがある。更に12年4月5日、東京・サントリーホールで、猿谷紀郎(さるやとしろう)に委嘱された第62回神宮式年遷宮の奉祝曲交響詩「浄闇(じょうあん)の祈り」が初演された。式年遷宮あるいは式年遷座を行う神社としてはほかに、島根県の出雲大社(60年ごと)があり、神体を仮殿に移しての大規模な修理のみを行うものでは宮城県の塩竃神社(しおがまじんじゃ 20年ごと)、京都市の賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ 21年ごと)、大阪市の住吉大社(約30年ごと)などがある。