ユニバーサルミュージックと日本ビクターが共同開発した、高音質CD(compact disc)。一般にCDは、(1)信号となる凹凸パターンを刻んだ「スタンパー」という金型に、(2)「ポリカーボネート」という透明樹脂を流してパターンを転写、(3)そこにメッキの要領でアルミの膜をつくることによって、光の反射や屈折でデジタル信号を表現する。だが、実は、プレーヤーがCDの信号を完全に読み取ることはできない。ディスク自体のゆがみや、再生時の高速回転で生じるブレ、あるいは信号の転写精度など、問題は複数に及ぶ。中でも、信号を読み取るためのレーザー光がポリカーボネートの層を通って記録層に達し、反射するプロセスにおいて、光の屈折や散乱が起きてしまう現象が大問題だった。それでも滞りなく再生できるのは、エラー訂正技術によって「読み取れなかった信号」を推測し、補完しているためである。それゆえ、再生される音声はもとの信号を完全に再現したものではなく、音質の劣化は避けられない。今まで、信号の読み取り精度を高めるため、反射率の高い純金を記録層に使ったり、プレーヤーのトレーの上に金属の塊でCDを密着させたりする試みがなされてきた。SHM-CDでは、スタンパーの精度を高めるとともに、素材の見直しを図り、より流動性を高めて正確なパターン転写を行える、さらに光の屈折や散乱を低減できる透明度の高い液晶用ポリカーボネートを採用することで、高音質を実現した。