歴史的文書や貴重な記録などの資料を保存し、有効に利用しようと、1997年に国連教育科学文化機関(UNESCO ユネスコ)が創設した制度。正式名称は「世界の記憶 Memory of the World」。2年に1度リストへの登録が行われるが、2009年7月30日、カリブ海のバルバドスで行われていた会合で新たに35点の文献が追加登録され、計193点になった。この中には、ナチスドイツの迫害を逃れるため、隠れ家で暮らしたユダヤ人一家の娘アンネ・フランクによる「アンネの日記」や、イギリス民主主義の原点とされる「マグナ・カルタ(大憲章)」(1215年公布)、中世ドイツの英雄叙事詩「ニーベルンゲンの歌」などが含まれている。ユネスコは、「アンネの日記」を「世界で最も読まれた10冊の本のうちの1つ」と評した。これまでにも、多くの文字の母体となった「フェニキア文字」や、「生きた象形文字」とも言われるチベットや中国雲南省のナシ族が使う「トンパ文字」、ヨーロッパ初の活版印刷「グーテンベルクの42行聖書」、作曲家ブラームスの作品集、1920年代のSF無声映画「メトロポリス」など、人類史上価値の高い資料が、古今東西から幅広く収集されてきたが、現在までに日本からの登録はない。