猛毒をもつフグ類を取り扱う者が保有しなければならない調理師免許。都道府県のふぐ条例などによって定められている。免許は、おおむね修得した都道府県のみで有効で、他の都道府県では無効な場合が多い。日本で獲れるフグ科に属する魚は9属37種で、卵巣や肝臓に猛毒があることは古くから知られていたが、毒素が解明されたのは卵巣から抽出して精製に成功した1912年のことで、フグ科(Tetraodontidae)の毒(toxin)であることからテトロドトキシン(tetrodotoxin)と命名された。ふぐ毒は無味、無色、無臭で加熱しても変化しないが、弱酸性やアルカリ性液中では分解して毒性を失う。ふぐ中毒にかかると舌が痺(しび)れて呼吸困難を起こし、呼吸が停止する。解毒剤がないので、早急に毒素を体外に除去させ、強心剤を投与するほか治療法はなく、絶命に至ることもある。ふぐ毒は、ふぐの種類、部位(臓器など)、漁獲域によっても異なり、季節によっても無毒のものが有毒化したり、個体差もあり、たとえ同種類、同時期、同海域のフグでも毒の強度は一様ではなく、有毒のものと無毒のものが混在している。フグを食用とするには、とりわけ専門的な知識を有するが、日本では年間20~40件程度の中毒事件が発生し、2~6人程度が死亡しており、多くは家庭での素人料理が原因である。2009年1月26日、山形県の飲食店で出された白子(精巣)を食べた客の7人が意識障害を起こす、中毒事件が発生した。ふぐ条例が定められているのは19都道府県のみで、フグになじみの薄い山形、宮城など東北6県では、ふぐ条例そものものがない。