その才能を高く評価されながらも、28歳の若さで戦病死した山中貞雄監督が1933年に撮った無声映画で、3部作のうちの2作目。公開当時、映画評論誌などで絶賛されたが、その後フィルムは失われ、「幻の名作」とされている。2009年8月27日、その断片が、「玩具映画」として発見されていたことが判明。08年に大阪のコレクターが劣化したフィルムを発見、大阪芸術大学の「玩具映画プロジェクト」が復元した。「玩具映画」とは、劇場上映後不要になった映画の見せ場などを寸断、複製したフィルムを家庭用に販売したもので、ブリキ製の手回し映写機で鑑賞する。今回発見されたのは、大河内伝次郎扮する鼠(ねずみ)小僧が、子供を連れた道中で大立ち回りを演じる約1分ほどの場面。山中貞雄の監督作品は26本あるが、ほとんどが散逸し、現在作品として鑑賞できるのは、トーキーの「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」(1935年)、「河内山宗俊」(36年)、「人情紙風船」(37年)の3作のみ。今回の発見は貴重な資料といえる。なお、このフィルムは山中貞雄生誕100年記念特集の一環として、09年9月12日に京都文化博物館、同月16、26日に東京国立近代美術館フィルムセンターで上映される。