生物を特殊な薬品に漬け、筋肉を透明化し、軟骨を青く、硬骨を赤くするなどして染色した標本。美しく色づけされた繊細な骨が瓶の中に浮いているように見え、まるでガラス細工のアート作品のようだが、魚類や鳥類、両生類など、本物の小動物の生体から作られており、内臓に捕食した他の生物を抱えていることもあるという。もともとは形態学、分類学などの研究で、生物の骨格の配置を調べるために数十年前に開発された手法で、魚の幼魚など小さなサイズの生物でも、生きていたころの骨の位置を変えずに、体の内部をそのまま立体化することができる。作成方法は対象などによってさまざまだが、2色に染める二重染色透明標本は、ホルマリンで標本を固定した上で、アルシアンブルーという薬品で軟骨を青く染め、トリプシンなどたんぱく質を分解する酵素で透明化、アリザリンレッドSで硬骨を赤く染め、最後に保存のためグリセリンの入った瓶に漬ける、といった手順で作る。きれいに透明化するためには、数カ月から1年近くを必要とするという。その神秘的な美しさが観賞用としても評価されつつあり、近年ではインターネットオークションや東急ハンズ、美術館などでインテリアとして売り出されるなど、じわじわ注目を集めている。2009年10月には、小学館が透明標本作家の冨田伊織による作品の写真集「新世界『透明標本』New World Transparent Specimens」を発売、宝島社からも同月、透明標本を用いた図鑑(ムック)が発売され、いずれも売り上げは好調という。