奈良県桜井市にある全長280mの前方後円墳。その規模などから、邪馬台国の女王卑弥呼(ひみこ)の墓とする説がある。2009年5月29日、国立歴史民俗博物館の研究グループが、同古墳の築造時期を西暦240~260年とする調査結果をまとめ、31日の日本考古学協会の総会で発表した。250年ごろとされる卑弥呼の死亡時期と築造時期が重なり、畿内説と九州説が対立する邪馬台国の所在地論争にも影響を与えそうな調査結果となった。「日本書紀」によれば、三輪山の神である大物主(おおものぬし)の妻となった倭迹迹日百襲姫(やまとととひももそひめ)の墓とされる。この姫は孝霊天皇の娘であるため、箸墓古墳は宮内庁に陵墓指定されており、原則的に発掘調査などはできない。今回の調査では、古墳の堀や堤から出土し、築造当時の形式とされる「布留0式(ふるれいしき)」土器に付着した炭化物など、十数点を放射性炭素年代測定し、周辺の墳墓や遺跡の測定値と総合して、240~260年という結論を導いた。ただ、放射性炭素年代法の精度にはまだ疑問の余地があり、中国の史書「魏志倭人伝(ぎしわじんでん)」では卑弥呼の墓を円墳としていることもあって、慎重な見方をする学者もいる。