ドイツ南西部のウルム近郊にある洞窟(どうくつ)。約3万年前を中心に前後数万年にわたる旧石器時代後期の遺跡があり、1970年代から発掘が続けられてきたが、ドイツ、チュービンゲン大学の研究チームは、2009年5月に発表済みの「ビーナス像」に続き、その70cm横からフルートを発見、6月24日付の科学誌「ネイチャー」(電子版)に報告した。これらは、地層や放射性炭素年代測定から3万5000年前と推定され、いずれも現時点では世界最古になる。「ビーナス像」とは、当時ヨーロッパに広く分布したオーリニャック文化(Aurignacian)の代表的彫像で、胸や尻など女性の特徴を強調し、多産や豊穣の象徴と考えられている。今回の像は高さ約6cm、幅約3.5cm、重さ約33gのマンモスの牙製で、頭部の代わりにひもを通す穴があり、ペンダント風に使われたものとみられる。一方のフルートは3点見つかり、最も保存状態のよいシロエリハゲワシの骨製のものは、長さ21.8cm、直径8mmで、5つの指穴を持ち、幅広い音階を持っていたと推定される。残る2点はマンモスの牙製で、いずれも破片だけだった。また周囲には、楽器製作に使ったとみられる石器のかけらや製作途中の骨類、壁画の顔料となる鉱物、炭、血、獣脂なども見つかっている。