南アフリカ共和国北部に位置する北ケープ州のカラハリ砂漠南端近くにある長さ140メートルほどの洞窟。同国最古となる約1万年前の壁画が残ることで知られ、観光スポットともなっているが、約200万年前の人類の生活跡が見つかっており、専門家の間で注目されていた。この洞窟を調査していたアメリカのボストン大学やカナダのトロント大学などの国際研究チームが、洞窟内の約100万年前の地層から、焼けた動物の骨片を発見。同時に植物の灰や石器も見つかったことから、ここに住んでいたホモ・エレクトス(直立原人)による人類最古の火の使用跡と結論づけた。2012年4月2日付のアメリカ科学アカデミー紀要電子版に掲載。骨や周辺の土は約500℃前後で加熱されており、同様の個所が洞窟内に広く分布することから、同チームは、草や葉を燃やして肉を焼いたのではないかと推定している。調査個所は、入り口から30メートルほど奥にあり、山火事などによる灰などが雨水や風で流入した可能性は低い。また、洞窟ではまれに堆積したコウモリの糞(ふん)が自然発火することもあるが、今回の場合それもないという。これまで最古とされていたのは、イスラエルのベノート・ヤーコブ橋遺跡で見つかった約79万年前の囲炉裏跡。こちらではのちに火打ち石も見つかり、自力で火を起こしていたことも判明している。一方、骨格や歯の研究から、人類は約190万年前にはすでに火を使って料理していたという説もある。