2011年10月6日、スウェーデン・アカデミーは、同年のノーベル文学賞をスウェーデンの詩人トーマス・トランストロンメル(Tomas Transtromer)(80歳)に授与すると発表した。授賞理由を「凝縮された明快なイメージを通して、現実に接近する新たな手法を示した」としている。トーマス・トランストロンメルは、1931年ストックホルム生まれ。ストックホルム大学で文学、心理学などを学び、心理学者として若者向け更生施設にも勤めた。第二次世界大戦後のスウェーデンを代表する国民的詩人で、日常生活や自然を簡潔でイメージ豊かに表現し、「隠喩の巨匠」と呼ばれる。54年の詩集「17編の詩」でデビューし注目を集めた。90年に脳卒中で倒れ、後遺症で右半身不随となり言葉も不自由となったが、96年には代表作の一つ「悲しみのゴンドラ」を発表、俳句の詩型に挑戦するなど、創作活動を続けている。他の詩集には「路上の秘密」(58年)、「半ば出来上がりの天国」(62年)、「バルト海」(74年)などがあり、作品は60以上の言語に翻訳されている。ノーベル賞のうち医学・生理学賞はストックホルムのカロリンスカ医学研究所が、物理学賞と化学賞と経済学賞はスウェーデン王立科学アカデミーが、文学賞はスウェーデン・アカデミーが、平和賞はノルウェーのノーベル賞委員会が選考にあたる。