2010年10月7日、スウェーデン・アカデミーは、同年のノーベル文学賞をペルーの作家マリオ・バルガス・リョサ(Mario Vargas Llosa)(74歳)に授与すると発表した。授賞理由を「権力の構造を地図のように描き出し、個人の抵抗と反乱、敗北の姿を鋭く表現した」としている。バルガス・リョサは、1936年ペルー南部のアレキパ生まれ。リマのサンマルコス大学で文学と法律を学ぶ。スペインのマドリード大学大学院に留学し、博士号を取得したのち、フランスのパリで通信社の記者などを務めた。63年に、陸軍軍人養成学校での自分の体験をもとにした衝撃的な小説「都会と犬ども」を発表。反発したペルー軍の将校らが大量の本を焼却する事件が起きたことで、内外の注目を集めた。66年に発表した、アマゾンの密林を舞台とした2冊目の長編「緑の家」では、前衛的な手法を駆使して、さまざまな文化が混在するペルー社会の抱える問題を描き、中南米の作家を対象にしたロムロ・ガリェゴス賞などを受賞して作家としての地位を固める。74年にペルーに帰国し、政治的活動を行うようになる。76~79年にかけては国際ペン会長を務めた。88年には右派連合「民主戦線」を結成し、90年に大統領選挙に出馬したが、決選投票でアルベルト・フジモリに敗れた。他の著書に「世界終末戦争」「継母礼賛」「パンタレオン大尉と女たち」など。ノーベル賞5部門のうち物理学賞と化学賞と経済学賞はスウェーデン王立科学アカデミーが、医学・生理学賞はストックホルムのカロリンスカ研究所が選考にあたるが、文学賞はスウェーデン・アカデミーが選考にあたる。