アグリコール製法によって造られるラム酒。ラム酒はサトウキビを原料とする蒸留酒だが、その製法は二つある。一つはインダストリアル製法と呼ばれるもので、サトウキビのジュースから砂糖を精製した後に残った成分、廃糖蜜を発酵・蒸留して造る。世界全体で造られるラム酒の97~98%は、このインダストリアル・ラム(アンドゥストリエル・ラム)である。もともとラム酒はサトウキビ製糖産業の副産物であり、原料を効率的により安価に利用できるため、この製法が主流となっている。もう一つのアグリコール製法で造られた、生産量の残り2~3%に当たる希少なラム酒が、アグリコール・ラムである。アグリコール製法とは、サトウキビを搾った新鮮なジュース100%のみで発酵・蒸留するものである。サトウキビは刈り取り後すぐに天然成分が変化し風味が損なわれるため、近くに工場があること、すばやくジュースにして減菌作業や酵母の投入をしなければならないこと、サトウキビの収穫時期であることなど、条件と手間のかかる製法である。しかし、サトウキビ本来の甘く濃厚な味と香りが味わえ、土地や生産者の違い、また造った年のサトウキビの生育状況など個性がはっきりと出やすい。樽(たる)による熟成ラムは、いっそうの深みと複雑さが増し、上質のウイスキーやコニャックの味わいに通じると言われている。主な生産地は、カリブ海やインド洋のフランス海外県とハイチなどだが、最近は沖縄のメーカーなど日本人が造るラム酒も登場し、その多様性を楽しむファンが増えている。