長野県の諏訪湖で厳冬期に見られる自然現象で、結氷した湖面に亀裂が入り、大音響とともにせり上がる。近年は温暖化などの影響で起こらない年も多くなったが、2012年2月4日、4年ぶりに御神渡りが確認された。1990年以降では、91年、98年、2003年、04年、06年、08年に次いで7回目。御神渡りのない年は「明けの海」と呼ばれる。原理としては、氷点下10℃前後の日が続くと、全面結氷した湖面の氷が昼夜の気温差で膨張と収縮を繰り返し、収縮時にできた亀裂が膨張時に両側から押されて氷が立ち上がり、山脈のように盛り上がるというもの。北海道では屈斜路湖(くっしゃろこ)や塘路湖(とうろこ)などでも同様の現象は起こるが、本州で本格的に見られるのは諏訪湖だけだという。諏訪地方では、これを諏訪大社上社(諏訪市)に祀(まつ)られた諏訪明神、すなわち建御名方命(たけみなかたのみこと)が下社(下諏訪町)に祀られた妻の八坂刀売命(やさかとめのみこと)の元に通う跡だと言い伝え、「御渡り(みわたり)」とも呼ぶ。御神渡りを判定するのは、諏訪市内にある八剣神社(やつるぎじんじゃ)で、中世以降氷脈の方向などを見て、その年の農作物や気候などの吉凶を占い、諏訪大社を通じて幕府に報告されてきた。同社には、1683(天和3)年以来の記録「御渡り帳」が伝わり、今日まで書き継がれている。同月6日には、最終的な氷の筋を決定する「拝観式」が行われ、宮坂清宮司が「御渡り帳」と照合して、12年の世相を「厳しい中にも明るい兆しが見える」、作柄は「中の上」と占った。