大阪の道頓堀周辺、「ミナミ」と呼ばれる繁華街に、1949年(昭和24)に山田六郎が創業開店した総合食堂で、正式な屋号は「大阪名物くいだおれ」。翌50年(翌25年)に、大阪伝統の文楽人形をベースとし、赤と白のストライプの帽子と服をまとい、チンドン屋の太鼓を携えたマスコット人形「くいだおれ太郎」を店頭に設置。喜劇俳優の杉狂児に似せて造形した電動人形で、首を左右に振り、口を開閉しながら、腰に据えた太鼓を両手でたたきつつ、背負った太鼓も打ち鳴らすパフォーマンスを披露する。店舗のマスコットという立場を超えて、ミナミの象徴的なキャラクターの地位を獲得しており、この地域を訪れる観光客にとって、定番の見物・撮影スポットとなっている。94年の関西国際空港開港の際には、航空会社のキャンペーンでオーストラリアへ「旅行」し、翌95年にはアメリカのロサンゼルスへも出向いた。また、サッカーのワールドカップや世界陸上などのイベントに合わせて、応援の法被(はっぴ)を着用するなど、大阪らしい遊び心が反映され、話題にのぼることもしばしばだった。同店は、割烹、和定食、居酒屋、洋食と、フロアごとに店舗を分けた経営をしていたが、2008年4月8日、建物・設備等の老朽化や家族経営の限界などを理由に、同年7月8日をもって閉店することを発表。早くも、閉店後の「くいだおれ太郎」の扱いに関して、方々から誘致のオファーがあるというが、落ち着き先は未定。