江戸時代に出版された「源氏物語」の注釈本の一つで、語句の意味や、どの巻に登場するかなどが解説されている一種の用語辞典。2008年12月4日、奈良大学が同書の版木2枚を発見したと発表した。天明4(1784)年の発行で、作者は不明。判型は今の文庫本に近く、上・中・下巻の計356ページから成る。用語はいろは順に並べられ、「うへびと」を「殿上人ナリ」と解説するなど、庶民にもわかりやすい内容になっている。約40年後の文政6(1823)年にも同じ版木で刷られており、その売れ行きのよさから見ても、当時「源氏物語」が広く大衆に親しまれていく過程で、大きな役割を果たしたものと考えられている。見つかった版木は奈良大学が1997年に京都の古書店から購入したもので、2枚とも長さ56cm、幅13cm、厚さ2cm。1枚の裏表両面に8ページ分が彫られていた。江戸時代、「源氏物語」の関連書はおよそ80種も出版されたが、版木が見つかったのは今回が初めてという。