日本初の勅撰和歌集「古今和歌集」の現存する最古の写本。全20巻に仮名序を合わせた21巻から成るが、現存する完本は巻第五、八、二十の3巻のみ(いずれも国宝)で、あとは断簡に切り分けられるなどして散逸。現在では、巻第一、二、三、九、十九の断簡および残存部の少ない零本、江戸時代に転写された巻十八の模刻本を除いて、そのほかの11巻分はまったく見つかっていない。「高野切」の名は、豊臣秀吉が高野山文殊院の高僧、木食応其(もくじきおうご)に与えた断簡が、しばらくその地に伝来したことにちなむ。1993年より、筑波大学芸術学系・書コースの学生・卒業生・修了生らが復元に取り組んできたが、18年の歳月を経て2011年1月に完成。同年2月8日から13日まで、学内の総合交流会館で「復元全巻完成記念展」を開催した。「古今和歌集」は、醍醐天皇の勅令により紀貫之らを選者として905(延喜5)年に成立。「高野切」は貫之直筆の写本と伝えられるが、今日の研究では11世紀半ばごろ、源兼行(みなもとのかねゆき)ら当時屈指の能書家3人が手分けして書写したもので、それぞれの特徴から優麗温雅な第一種、雄勁(ゆうけい)老練な第二種、明快端麗な第三種に分類される。仮名の連綿(続けて書くこと)や墨継ぎ(筆に再び墨を含ませること)が特に美しく、日本の書道史上仮名古筆の頂点として、書を学ぶ者の手本とされる。