2009年3月20日にがんのため、34歳の若さで死去したSF作家伊藤計劃(けいかく)の遺作。08年12月に早川書房から発売され、09年12月6日には第30回日本SF大賞を受賞した。故人が同賞の大賞を受賞するのは初めて。これに先立つ同年7月4日には、第39回星雲賞日本長編部門も受賞している。前者は日本SF作家クラブが主催し、同クラブの総会で選ばれた選考委員により選出。一方後者はSF大会参加者がファン投票で選ぶもので、いわばプロ中のプロと一般読者の双方から、熱い支持を得たことになる。著者の伊藤計劃は、07年第7回小松左京賞の最終候補となった「虐殺器官」でデビュー。同作で「SFが読みたい!2008年版」1位、第28回日本SF大賞候補となるなど、その才能を高く評価され、将来を嘱望されていた。その後デビュー作のスピンオフ作品や人気ゲームシリーズ「METALGEAR SOLID」のノベライズなどを経て、「ハーモニー」は待望のオリジナル長編第2作だった。