スウェーデンのアルフレッド・ノーベル(Alfred Bernhard Nobel 1833~96)の遺言によって創設された世界で最も著名な賞。化学者であり実業家でもあったノーベルは、1867年にダイナマイトを発明し巨万の富を得たが、平和への志が篤く、彼の死後、1900年に遺言に基づき全財産3100万クローナを基金とするノーベル賞の運営を行うノーベル財団が設立された。ノーベル賞に選考される候補者は「国籍を考慮に入れず、人類の福祉に最も具体的に貢献した」人物とされ、選考にあたる部門など詳細な規定が遺言に盛り込まれている。ノーベル賞は、1901年にノーベル物理学賞、ノーベル化学賞、ノーベル医学・生理学賞(正しくは「ノーベル生理学・医学賞(Nobel Prize in Physiology or Medicine)」の順)、ノーベル文学賞、ノーベル平和賞の5部門から始まり、69年にノーベル経済学賞が加わった。各賞の選考にあたるのは、物理学賞と化学賞と経済学賞がスウェーデン王立科学アカデミー、医学・生理学賞がカロリンスカ研究所、文学賞がスウェーデン・アカデミー、平和賞がノルウェー国会ノーベル委員会である。平和賞の選考がノルウェーにあるのは、次の理由による。ノーベルの生前時には、スウェーデンとノルウェーは同君連合(君主制をとる国家間の結合で、国家は内部的には独立しながらも国際法上は一つの国家として振る舞う国家連合)を組んでおり、当時ノルウェー国会(ストーティング Storting)は国際的な紛争の不拡散のため軍縮・調停を進めて平和という概念を追求していたことから、ノーベルが平和賞の選考をストーティングに託したためとされる。また経済学賞は、68年にスウェーデン国立銀行が設立300周年の一環としてノーベル財団に働きかけて設立されたもので、正式にはアルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン銀行賞と呼ばれ、これのみはノーベルの遺言ではない。第1回ノーベル賞は、物理学賞がレントゲン(ドイツ)、化学賞がファント・ホフ(オランダ)、医学・生理学賞がフォン・ベーリング(ドイツ)、文学賞がシュリ・プリュドム(フランス)、平和賞がデュナン(スイス)、69年第1回経済学賞がフリッシュ(ノルウェー)となっている。日本人の受賞者は、物理学賞で受賞した湯川秀樹(49年)をはじめとして、2010年までに18人(アメリカ国籍の1人も含む)となっている。