スポーツやゲームなどの勝負事で、勝者が敗者の悔しそうな様子や悲しげな表情などを見て喜ぶ心理状態。一般に、人は他人の表情や様子を見て、悲しそうに見えればこちらも悲しみを覚え、うれしそうに見えればこちらもうれしくなるような心理反応がある。これを「共感」と呼ぶが、ある状況においてはまったく逆の反応を示すことがあり、この時の脳内メカニズムは解明されていなかった。放射線医学総合研究所の山田真希子研究員らの研究チームが、世界で初めて「反共感」時における脳の反応をとらえることに成功。2010年9月4日、脳神経研究の中心をなす3つの学会である日本神経科学会、日本神経化学会、日本神経回路学会が、2度目の合同大会として神戸で開催した「Neuro2010」(9月2~4日)で報告された。それによると、同研究チームが男子大学生15人を対象にして、トランプを使った1対1の簡単なゲームで勝敗を競わせたところ、敗者の悔しそうな表情を見た勝者では、前頭葉の「前部帯状回」という部位に通常より強い電気信号が現れた。また、自己愛傾向の強い人ほど、この活動は高まったという。前部帯状回は、大脳辺縁系に属し、情動的要素の処理や、注意、予測など高次の認知機能に関与するとされる。山田研究員は、今回の発見が自己愛性人格障害や反社会性人格障害など、様々な対人関係障害の解明と矯正につながるものとしている。