現代では、年長者が年少者へ与える「正月のこづかい」とみなされているが、本来は「年玉」であり、「年(歳)魂」を意味した。古来、日本では正月とは「年神(としがみ)」を迎える行事である。年神は、「一年を守護する神」「農作を守護する神」「家を守護する祖霊」を融合して一つの神とする民間信仰で、年神を迎えるにあたり、家々では餅と特別な料理を供えて歓待した。年神はその代償に、「魂=玉=たま」すなわち「年の玉」を与えてくれる。「年の玉=餅」には霊力や活力が備わっており、家父長は神棚に供えた年玉を家族などに分け与えた。またその餅を雑煮にして、お供えした料理(=お節料理)を年神とともに食すことで、霊力や活力を体内に取り込み、また年(歳)を取ることができたのである。室町時代には、新年の祝いに年玉として、硯、餅、筆、扇などを贈り合う習慣が生まれている。江戸時代になると、商家では奉公人へ年玉として、餅代わりに金銭が渡されるようになり、やがて正月には「お年玉」として、金銭を分け与える習慣が定着したとものと考えられている。