2012年10月11日、スウェーデン・アカデミーは、同年のノーベル文学賞を中国の作家莫言(ばくげん)(57歳)に授与すると発表した。1901年の賞創設以来109人目の受賞者で、中国国籍の作家による受賞は初。中国出身の作家としては、フランスに亡命した高行健(こうこうけん)が、2000年に受賞している。授賞理由は「幻覚的なリアリズムによって、民話、歴史、現代を融合させた」ことなど。莫言は1955年、中国山東省の農村生まれ。本名は管謨業(かんぼぎょう)。76年に人民解放軍へ入隊後、創作活動をスタート。85年発表の中編小説「透明な赤蕪(あかかぶ)」でデビュー。故郷を舞台に抗日戦争を描いた86年発表の「赤い高粱(こうりゃん)」は、チャン・イーモウ(張芸謀)監督により映画化され(邦題「紅いコーリャン」)、88年のベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞。アメリカのウィリアム・フォークナーやコロンビアのガルシア・マルケスから影響を受け、幻想的な表現で中国農村部の現実を描いた作品群は「魔術的リアリズム」と称される。他の作品に「酒国」(92年)、「豊乳肥臀(ひでん)」(96年)、「白檀(びゃくだん)の刑」(2001年)など。ノーベル賞のうち、文学賞の選考にあたるのはスウェーデン・アカデミー。その他、医学・生理学賞はストックホルムのカロリンスカ医学研究所が、物理学賞と化学賞と経済学賞はスウェーデン王立科学アカデミーが、平和賞はノルウェーのノーベル賞委員会が選考する。