将軍の側室(そくしつ。正室以外の妻のこと)。5代将軍・綱吉のころまで、将軍の側室は京都や江戸の町人の娘などさまざまな階層の者から選ばれた。子供を産むと大奥内に部屋を与えられ、御部屋様と称された。綱吉との間に一男一女をもうけたお伝の方は、「御袋様」と称され、独立した御殿を与えられ「五の丸様」とも称された。御部屋様の近親は取り立てられ、大名になることもあった。しかし、江戸時代後期になると、将軍の側室はほとんどが御中(おちゅうろう)の中から選ばれ、御次(おつぎ)など他の女中で将軍の手が付いた者も御中に昇進した。つまり、将軍の寵愛(ちょうあい)を受けることも、大奥女中の奉公の一つであるとされたのである。ただ、将軍の手が付いただけだと御中のままだが、子供をもうけると「御腹様(おはらさま)」となり、部屋を与えられ、老女上座、姫君様格などの身分を与えられて「御部屋様」となった。将軍に性の手ほどきをする女中が「御内証之方(ごないしょうのかた)」だとするテレビドラマがあるが、それは間違いで、「御内証之方」は将軍の跡継ぎを産んだ側室の尊称である。
将軍(しょうぐん)
幕府の主権者で、形式的には朝廷から任命される。正確には征夷大将軍で、大臣を兼ね、正二位に叙された。
大奥(おおおく)
江戸城内にあった将軍の正室や側室の住居。
大名(だいみょう)
将軍の直臣のうち、1万石以上の知行(ちぎょう。幕府や藩が家臣に与える、領地から年貢などを徴収する権利)を与えられた武士。
御中(おちゅうろう)
数ある大奥女中の役職の一つ。将軍や御台所の身の回りの世話をする。将軍の側室は将軍付きの御中だった。
御次(おつぎ)
数ある大奥女中の役職の一つ。