武家が罪を犯したときに命じられる刑罰だが、理念的には自ら責任を取って死んだことになり、家督相続などを認められることが多かった。旗本の場合、罪を犯したことが明らかになると、老中から封書御尋(ふうしょおたずね)という文書が来る。これを見て自宅で切腹すれば、罪はなかったものとされた。もし、知らぬことと返答すると、揚屋(あがりや。畳敷きの牢屋)に入れられ、服毒自殺を強要された。諸藩の藩士などの陪臣が江戸で殺人を犯すと、町奉行が裁き、藩に引き渡す。そのとき、斬首などを命じることがあるが、藩が切腹に処したいと願えば、許された。
旗本(はたもと)
1万石未満の将軍の直臣で、御目見得以上(将軍に拝謁できる)の者をいい、約5000人いた。
老中(ろうじゅう)
通常、江戸幕府の政務を統轄する最高職で、若年寄の補佐を受け、日常政務を執行する。
藩(はん)
将軍から1万石以上の石高(こくだか)を与えられた大名が治める、それぞれの地域に設けられた政治機構。
町奉行(まちぶぎょう)
町奉行所の長官で、寺社地と武家地を除く江戸の行政担当者。警察業務や司法業務を日常的に遂行し、消防や災害救助も行った。