島流しのこと。江戸時代、博打(ばくち)の主犯、女犯の寺持僧、過失による殺人、武士の子の縁座(えんざ。一族に及ぶ刑罰)などに科された刑罰。田畑、家屋敷、家財の闕所(けっしょ。没収)が付加された。江戸と大坂の2カ所に集められ、江戸からは伊豆七島、大坂からは薩摩、五島、隠岐、壱岐、天草へ流されたが、のちに八丈島、三宅島、新島、隠岐のみとなる。森鴎外(「鴎」は旧字)の『高瀬舟』は、京都の流人を大坂に送る場面を描き出している。8代将軍・吉宗政権期に定められた法令集『公事方御定書(くじかたおさだめがき)』では、死刑につぐ重刑とされている。しかし、天明期(1781~1789)の隠岐の流人史料から、無宿人として諸国をさまよわなければならなくなる重追放よりも、遠島を志願した者がいたことが明らかになっている。実際、島では、流人たちに住居が与えられ、病気の際には、村の看護が受けられるなど、最低限の生活が保障されていた。また、島民女性と結婚できる場合もあった。しかし、島抜(しまぬけ)をした場合は死罪となった。
博打(ばくち)
賭博のこと。江戸幕府の法令では、賭博は「博奕」と表記された。賭博を打つ人を「博奕打ち」といい、それが「博打」に省略され、次第に賭博そのものを表す言葉となった。
武士(ぶし)
平安時代(794〜12世紀末)後期に生まれた、戦いを任務とする者。鎌倉時代以降、武士が政権を握ったため、支配階級として政治をも担当することになった。
将軍(しょうぐん)
幕府の主権者で、形式的には朝廷から任命される。正確には征夷大将軍で、大臣を兼ね、正二位に叙された。
『公事方御定書(くじかたおさだめがき)』
幕府編纂による法令集。上下巻で構成され、上巻は庶民へ決まり事を伝達するお触書(おふれがき)などをまとめ、下巻は過去の判例をもとに判決を行う際に参考とするべき「百箇条」をまとめたもの。
無宿(むしゅく)
決まった住居や生業をもたず、人別帳への登録もなされていない者。
死罪(しざい)
死刑のこと。正確には、死罪は、斬首のうえ胴を様斬り(ためしぎり)に使用されるもので、単なる斬首は下手人と呼んだ。