全国の宗教統制や寺社領の管理などを行う役職で、奏者番(そうしゃばん。武家に関する儀式や典礼を務める要職)の上位者が兼任する。町奉行・勘定奉行とともに三奉行と呼ばれ、評定所(老中の諮問機関で、最高裁判所の役目を果たす)のメンバーでもある。寛政3年(1791)より寺社奉行を務めた播磨国龍野藩(はりまのくにたつのはん)主・脇坂安董(わきさかやすただ)が携わった案件に、大奥女中のスキャンダルである「延命院事件(えんめいいんじけん。享和3年[1803])」がある。延命院は江戸谷中にある安産祈願で有名な寺院で、住職・日潤(日道ともいう)が、代参に来た大奥女中と密通し、妊娠した者には堕胎薬を渡していたことが摘発された。安董は、家臣の娘を密偵として、日潤にあてた艶書を証拠としてつかむことに成功し、日潤は死罪となった。日潤にかかわった大奥女中は59人ともいわれるが、スキャンダルの拡大をおそれ、大奥女中の処罰は少数にとどめられたという。安董は、功績が認められ、のちに老中まで昇進している。
町奉行(まちぶぎょう)
町奉行所の長官で、寺社地と武家地を除く江戸の行政担当者。警察業務や司法業務を日常的に遂行し、消防や災害救助も行った。
勘定奉行(かんじょうぶぎょう)
勘定所の長官で、幕府財政を担当するとともに、幕府直轄領の民政、徴税、司法にもあたり、定員は4人。
老中(ろうじゅう)
通常、江戸幕府の政務を統轄する最高職で、若年寄の補佐を受け、日常政務を執行する。
大奥女中(おおおくじょちゅう)
大奥に勤務する女中で、御年寄をはじめとして多くの役職があった。
死罪(しざい)
死刑のこと。正確には、死罪は、斬首のうえ胴を様斬り(ためしぎり)に使用されるもので、単なる斬首は下手人と呼んだ。