老中の公設秘書。右筆は、主君の文書を執筆する役だが、幕府においては御内書(ごないしょ。将軍の書状)や日記の執筆は表右筆が行い、奥右筆は老中に付属して、法令・判例の調査や幕府文書の起草にあたった。定員は18人、ほかに組頭が2人いた。格式は大番の次、役高200俵。組頭は従六位相当の布衣役(ほいやく)で、役高400石、役料200俵だった。さして高い位置付けの役職ではないが、老中の諮問にあたるだけにその権力は大名でさえ気を遣うほどで、組頭や上席の奥右筆は、諸大名からの付け届けがあって裕福だった。ただし、たいへん繁忙な役職で、表右筆から奥右筆の見習いで入ると、30日ほどはろくに寝られなかったという。
老中(ろうじゅう)
通常、江戸幕府の政務を統轄する最高職で、若年寄の補佐を受け、日常政務を執行する。
幕府(ばくふ)
武家の政府で、もともとは近衛大将や征夷大将軍の居所を指したが、鎌倉幕府以来、征夷大将軍に任じられた武家が政治を行う場所やその政府のことをいった。
将軍(しょうぐん)
幕府の主権者で、形式的には朝廷から任命される。正確には征夷大将軍で、大臣を兼ね、正二位に叙された。
布衣役(ほいやく)
旗本の中で、従六位相当にあり、幕府から布衣の着用を許された者。布衣は典礼・式典のような公式行事の場で着用する無紋の礼装のこと。
大名(だいみょう)
将軍の直臣のうち、1万石以上の知行(ちぎょう。幕府や藩が家臣に与える、領地から年貢などを徴収する権利)を与えられた武士。