元禄年間(1688~1704)の歌舞伎において、上方(かみがた 京都~大坂地方)で坂田藤十郎や芳沢あやめによって世話物と呼ばれる現代劇が発達したが、江戸では市川團十郎による荒事(あらごと)と呼ばれる勇壮な舞台芸術が発達した。18世紀以降、百万都市に発達した江戸では、『助六』『暫(しばらく)』『曾我狂言』などの荒事が江戸っ子の支持を集めた。19世紀になると、下層社会の実態を演じた生世話物(きぜわもの)や鶴屋南北の『東海道四谷怪談』などの怪談・奇談が人気を集めた。代表的な名優は、五代目・松本幸四郎、七代目・市川團十郎、三代目・尾上菊五郎らである。明治維新後は、歌舞伎は荒唐無稽なものとみなされ、演劇改良運動がなされたが、現代劇に発展することなく、逆に古典芸能として評価されるようになる。