諸藩の渉外担当役。江戸時代の大名は参勤交代を行っていたため、江戸を留守にする際には江戸に常駐し、幕府からの指示を仰ぐ家臣が必要だった。当初は、家老クラスの家臣が留守居とされたが、寛永(1624~44)のころから中級藩士が務めるようになった。藩の重役である家老では、指示を受けるにせよ、嘆願するにせよ、幕府と藩の間で公式なものとなる。それを回避するため、中級家臣を江戸留守居役とし、老中からの内々の指示を受けさせ、あるいは老中に内願を行わせるなど、公式のやり取り以前の根回しを担当させることになったのである。そのため老中は、留守居役に対しては、公式には命じにくいことを指示し、藩が自発的に行動するようにしむける半面、留守居役からの内願に対し、その実現方法を助言するなど、老中と留守居役の水面下の交渉は幕藩関係を円滑にする役割を果たした。幕府の法令などは、大目付が諸藩の留守居役を集めて申し渡した。留守居役は、諸藩の中級家臣が任命され、比較的長期間務めた。留守居役は、情報収集を行う必要から、諸藩の留守居役が集まって留守居組合という組織を作って行動した。そのため、江戸時代中期には、組合の承認を得なければ、大名でさえ自藩の留守居役を更迭できないという弊害を生じた。
藩(はん)
将軍から1万石以上の石高(こくだか)を与えられた大名が治める、それぞれの地域に設けられた政治機構。
大名(だいみょう)
将軍の直臣のうち、1万石以上の知行(ちぎょう。幕府や藩が家臣に与える、領地から年貢などを徴収する権利)を与えられた武士。
参勤交代(さんきんこうたい)
各地の諸大名を江戸に参勤させる制度。
幕府(ばくふ)
武家の政府で、もともとは近衛大将や征夷大将軍の居所を指したが、鎌倉幕府以来、征夷大将軍に任じられた武家が政治を行う場所やその政府のことをいった。
家老(かろう)
藩士の最高位。現代でいえば、代表権をもつ藩政の責任者で、「重役」ともいわれる。大藩では家格の高い家が世襲した。
老中(ろうじゅう)
通常、江戸幕府の政務を統轄する最高職で、若年寄の補佐を受け、日常政務を執行する。
大目付(おおめつけ)
幕臣の監察にあたる役職を目付といい、大目付は大名の監察にあたる役職で、町奉行や勘定奉行を勤めた旗本が任じられた。