宿場で、参勤交代の大名や勅使、あるいは幕府役人などが宿泊した民間の施設。一宿場に一本陣という規則はなく、複数ある大きな宿場もあれば、まったくない宿場もある。本陣には屋根付き冠木(かぶき)門や式台付きの玄関、平屋建てで、書院造りの上段の間や泉水付きの庭園などがあった。参勤交代の際、大名は側近の家来とともに本陣に入り、食事は随行した料理人が作る。宿泊代相当の料金を払うが、それ以外にも、本陣亭主の献上物に対する謝礼金や祝儀などを与える。中小大名では、本陣まかないの料理をとる者もいた。本陣を務める者は、旧家の者で、名主や問屋役を兼任し、苗字帯刀が認められる有力者だった。しかし、大名財政が窮乏すると、謝礼金の支払いを惜しんで献上物を断る大名が出るなど、あまり有利なものではなくなり、経営に苦しんで、本陣株を他人に譲渡する者も出た。空いているときは、一般の旅行客を泊める本陣も出てきている。本陣に準じる宿泊施設に脇本陣(わきほんじん)がある。
宿場(しゅくば)
旅人が宿泊する施設が集まる場所。運輸・通信・休泊を任務とする公共施設であり、その業務を果たすための「問屋場(といやば)」が置かれた。
参勤交代(さんきんこうたい)
各地の諸大名を江戸に参勤させる制度。
大名(だいみょう)
将軍の直臣のうち、1万石以上の知行(ちぎょう。幕府や藩が家臣に与える、領地から年貢などを徴収する権利)を与えられた武士。
勅使(ちょくし)
天皇の命令、すなわち勅命を授かった使者。
幕府(ばくふ)
武家の政府で、もともとは近衛大将や征夷大将軍の居所を指したが、鎌倉幕府以来、征夷大将軍に任じられた武家が政治を行う場所やその政府のことをいった。
問屋役(といややく)
運輸・通信・休泊のための公共施設である宿場において、その業務や事務を果たす「問屋場(といやば)」を統括する責任者。