羽織は、本来は防寒用の上着で、男性用として次第に装飾用としても用いられるようになった。表が黒で地味に仕立て、裏地を派手にするものもあった。将軍は、外出のとき、黒羽織を用いるので、将軍を護衛する御徒(おかち)は将軍の身代わりとなれるよう黒羽織が支給された。このことを巧みに使ってオチを付けた小説に、浅田次郎の『憑神』がある。元文(1736~1741)のころ、女性が羽織を着るようになり、深川の芸者が羽織を着て座敷に上がるようになった。これを羽織芸者といい、江戸の「粋(いき)」を示すファッションとして人気を呼んだが、風俗を乱すことを案じた幕府が、延享5年(1748)、女羽織の禁令を出した。このため、女羽織は途絶えるが、幕末には再び復活して、女性が羽織を着るようになる。
将軍(しょうぐん)
幕府の主権者で、形式的には朝廷から任命される。正確には征夷大将軍で、大臣を兼ね、正二位に叙された。
芸者(げいしゃ)
宴席や酒席に呼ばれ、踊りや三味線などの芸を演じて座に興を添える者。最初は男女ともにいたが、男芸者は幇間(たいこもち)などと呼ばれ、やがて女性に限るようになった。
幕府(ばくふ)
武家の政府で、もともとは近衛大将や征夷大将軍の居所を指したが、鎌倉幕府以来、征夷大将軍に任じられた武家が政治を行う場所やその政府のことをいった。