家を建てるときには、左官(さかん)、屋根葺き(やねふき)、建具職(たてぐしょく)、表具職(ひょうぐしょく)、畳職(たたみしょく)などさまざまな専門職人が関与したが、それを指揮するのが大工であった。大工は、道具を使っての作業や彫刻などを行うだけではなく、設計、積算、材料の手配なども行っていた。いわば、職人であるとともに家作りのコーディネーターでもあった。大工の使う道具は、鋸(のこぎり)、手斧(ちょうな)、鉋(かんな)、金槌(かなづち)、鑿(のみ)、錐(きり)、墨壺(すみつぼ)などだが、室町時代(1336~1573)末期から江戸時代初期にかけて飛躍的な進歩をとげている。最も大きな発明としては、床などの板材を作るための、2.5mはある2人で挽く巨大な縦挽きの鋸の大鋸(おが)がある。それまでは、木材に楔(くさび)を打ち込んで挽き割っていたが、大鋸の登場によって薄い板が正確に作れるようになった。凹型にへこんだ木材の内側を削る台鉋(だいがんな)が使われるようになったのも、江戸初期である。釘も使う場所によってさまざまに工夫された。